スタック
スタックはデータ構造の一つです。
スタックの仕組みは、ものを縦に積み上げる事を考えるとイメージしやすいです。
積み上げられた山からものを取り出す場合、上から順番に取り出す事になります。
自分の机の上の郵便が、古いものが下、新しい郵便は上に重ねて置かれ、封筒を開けるのは上の郵便から開ける仕草に似ています。
スタックにデータを追加する場合、データは一番最後に追加されます。
スタックにデータを追加する操作をpushと呼びます。
スタックからデータを取り出す場合、最も新しく追加されたデータから取り出されます。
スタックからデータを取り出す操作をpopと呼びます。
このような、後から入れたものを先に出す「後入れ先出し」の仕組みを「Last In First Out 」を略してLIFOと呼びます。
プログラムソース
この章で使っているプログラムソースは以下にあります。
03_1Stack.sh 一般的な配列のスタック
03_2Eval_Stack.sh 擬似的な2次元配列で実装したスタック
スタックの処理アルゴリズム
では実行処理を書きます。
execStack という実行関数にして、配列を10用意することにします。
##
# 実行
execStack 10;
exit;
では、execStack()関数を書きます。
execStack()関数の中身として、10個の配列にランダムな値を一つ一つ代入して配列を完成させる処理。
その後、スタックのPOPポップ、PUSHプッシュ、そして今の段階の配列の状態を確認するdisplay()関数の呼び出しを一連で書き連ねたstack()関数の呼び出しを書きます。
##
# <>execStack()
# スタックの実行
function execStack(){
setArray "$1";
stack;
}
##
# 実行
execStack 10;
exit;
では setArray() を見ていきます。
execStack()で呼び出しているのは、
set Array "$1";
ですが、"$1"というのは、
execStack 10;
の、10です。
setArray()では、受け取った10が入った変数は$1として受け取ります。forループの条件式の中で$1が見えますね。
このsetArray()は、これまでの配列、バブルソート、選択ソート、挿入ソートでもでてきた同じものです。
inset()されるたびに、peekがインクリメントして、新しい要素にランダムに生成された値を代入します。
##
# <>insert()
# 配列に値を挿入
function insert(){
array[$((peek++))]="$1";
}
##
# <>setArray()
# 配列にランダムな値を要素として挿入
function setArray(){
peek=0;
for((i=0;i<$1;i++));do
insert $(echo "$RANDOM");
done
}
次にstack()関数を見ていきます。
stack()関数を追記したソースは以下のとおりです。
上から順番に、display で、まずは入れ全体の状態を見ます。
次に stackPop で、配列から一つPOP(抜き出す)します。
次に stackPush で、配列の末尾にランダムな値を一つ追加します。
##
# <>stack()
# スタック(表示とポップとプッシュ)の実行
function stack(){
display; #表示
stackPop;
stackPush;
stackPush;
display; #表示
stackPop;
stackPop;
stackPop;
stackPop;
display; #表示
stackPop;
stackPop;
stackPop;
display; #表示
stackPop;
stackPop;
stackPop;
display; #表示
stackPop;
stackPop; # Empty
}
##
# <>execStack()
# スタックの実行
function execStack(){
setArray "$1";
stack;
}
##
# 実行
execStack 10;
exit;
さて、スタックを知るために必要なのは以下の3つの関数です。
プッシュ、ポップはイメージでわかると思います。
図を見ていただければ直感的に理解できると思います。
ピークというのは、これも図のpeekを見てもらうとわかりやすいです。これまでのアルゴリズムの中でnElems
という変数で使われていたものが、スタックの中ではpeekと名前を変えています(アルゴリズムの世界でそうされています)
stackPeek()という関数は、プッシュ、ポップをするたびに呼び出される関数で、今何をプッシュしたか、今何をポップしたかを表示する関数です。
プッシュ、ポップするたびに、peekは上がったり下がったりします。
##
# <>stackPeek()
# ピーク
function stackPeek(){
echo "$1 : $peek:"${array[$peek]}"";
}
##
# <>stackPush()
# プッシュ
function stackPush(){
array[$((peek))]=$(echo "$RANDOM");
stackPeek "push";
((peek++));
}
##
# <>stackPop()
# ポップ
function stackPop(){
if (($peek!=0));then
((peek--));
stackPeek "pop";
else
echo "Stack is empty";
fi
}
bash/シェルスクリプトによる疑似2次元配列の実装
#######################################
# 03_1Stack.shを、少しだけオブジェクティブに
# aRray[0].getValue() で値を取得できるように改変した
# 配列にIDと値を入れるだけのbashスクリプト
#######################################
##
# グローバル変数
declare -i nElems=0;
#
# <>display()
# 配列を表示
function display(){
for((i=0;i<nElems;i++)){
echo -n "aRray[$i] \
ID: " $( aRray[$i].getID ) " \
Value:" $( aRray[$i].getValue ) ;
echo "";
}
}
##
# <>setValue()
# セッター
function setValue() {
#今後挿入や置き換えに備えてnElemsとは別の変数を用意しておく
local Elem="$1";
local value="$2";
eval "aRray[$Elem].getValue() { echo "$value"; }"
}
##
# <>setID()
# セッター
function setID(){
#今後挿入や置き換えに備えてnElemsとは別の変数を用意しておく
local Elem="$1";
local ID="$2";
eval "aRray[$Elem].getID() { echo "$ID"; }"
}
##
# stackPeek()
# ピーク
function stackPeek(){
echo "$1 : $((nElems-1)):$(aRray[$((nElems-1))].getValue)";
}
##
# stackPush()
# プッシュ
function stackPush(){
local value=$( echo $RANDOM );
local ID=$(aRray[$((nElems-1))].getID)
insert $((ID++)) $value;
stackPeek "push";
}
##
# <>stackPop()
# ポップ
function stackPop(){
if(($nElems!=0));then
stackPeek "pop";
((nElems--));
else
echo "Stack is empty";
fi
}
##
# <>stack()
# スタックの処理を明示的に手続き型で書いています。
function stack(){
display;
stackPop;
stackPush;
stackPush;
display;
stackPop;
stackPop;
stackPop;
stackPop;
display;
stackPop;
stackPop;
stackPop;
display;
stackPop;
stackPop;
stackPop;
display;
stackPop;
stackPop;# Empty
}
##
# <> insert
# 配列の要素に値を代入
function insert(){
local ID=$1; #100からの連番
local value=$2; #配列に代入される要素の値
setID "$nElems" "$ID"; #IDをセット
setValue "$nElems" "$value"; #Valueをセット
((nElems++));
}
##
# <> set Array
# 配列を作成
function setArray(){
local N=$1; #すべての要素数
local ID=100; #100からの連番
local value; #配列に代入される要素の値
for((i=0;i<N;i++)){
value=$( echo $RANDOM );
insert $((ID++)) $value;
}
}
##
#
# メインルーチン
function execStack(){
local N=$1; #配列をセット
setArray "$N";
stack;
}
##
# 実行
execStack 10;
exit;
実行結果
aRray[0] ID: 100 Value: 27417
aRray[1] ID: 101 Value: 2106
aRray[2] ID: 102 Value: 12360
aRray[3] ID: 103 Value: 10391
aRray[4] ID: 104 Value: 20982
aRray[5] ID: 105 Value: 4280
aRray[6] ID: 106 Value: 8584
aRray[7] ID: 107 Value: 30998
aRray[8] ID: 108 Value: 363
aRray[9] ID: 109 Value: 29461
pop : 9:29461
push : 9:30571
push : 10:9219
aRray[0] ID: 100 Value: 27417
aRray[1] ID: 101 Value: 2106
aRray[2] ID: 102 Value: 12360
aRray[3] ID: 103 Value: 10391
aRray[4] ID: 104 Value: 20982
aRray[5] ID: 105 Value: 4280
aRray[6] ID: 106 Value: 8584
aRray[7] ID: 107 Value: 30998
aRray[8] ID: 108 Value: 363
aRray[9] ID: 108 Value: 30571
aRray[10] ID: 108 Value: 9219
pop : 10:9219
pop : 9:30571
pop : 8:363
pop : 7:30998
aRray[0] ID: 100 Value: 27417
aRray[1] ID: 101 Value: 2106
aRray[2] ID: 102 Value: 12360
aRray[3] ID: 103 Value: 10391
aRray[4] ID: 104 Value: 20982
aRray[5] ID: 105 Value: 4280
aRray[6] ID: 106 Value: 8584
pop : 6:8584
pop : 5:4280
pop : 4:20982
aRray[0] ID: 100 Value: 27417
aRray[1] ID: 101 Value: 2106
aRray[2] ID: 102 Value: 12360
aRray[3] ID: 103 Value: 10391
pop : 3:10391
pop : 2:12360
pop : 1:2106
aRray[0] ID: 100 Value: 27417
pop : 0:27417
Stack is empty
「ざっくり」シリーズのご紹介
【アルゴリズム 再帰】ざっくりわかるシェルスクリプト15
https://suzukiiichiro.github.io/posts/2022-10-07-01-algorithm-recursion-suzuki/
【アルゴリズム キュー】ざっくりわかるシェルスクリプト14
https://suzukiiichiro.github.io/posts/2022-10-06-01-algorithm-queue-suzuki/
【アルゴリズム スタック】ざっくりわかるシェルスクリプト13
https://suzukiiichiro.github.io/posts/2022-10-06-01-algorithm-stack-suzuki/
【アルゴリズム 挿入ソート】ざっくりわかるシェルスクリプト12
https://suzukiiichiro.github.io/posts/2022-10-05-01-algorithm-insertionsort-suzuki/
【アルゴリズム 選択ソート】ざっくりわかるシェルスクリプト11
https://suzukiiichiro.github.io/posts/2022-10-05-01-algorithm-selectionsort-suzuki/
【アルゴリズム バブルソート】ざっくりわかるシェルスクリプト10
https://suzukiiichiro.github.io/posts/2022-10-05-01-algorithm-bubblesort-suzuki/
【アルゴリズム ビッグオー】ざっくりわかるシェルスクリプト9
https://suzukiiichiro.github.io/posts/2022-10-04-01-algorithm-bigo-suzuki/
【アルゴリズム 2次元配列編】ざっくりわかるシェルスクリプト8
https://suzukiiichiro.github.io/posts/2022-10-03-01-algorithm-eval-array-suzuki/
【アルゴリズム 配列準備編】ざっくりわかるシェルスクリプト7
https://suzukiiichiro.github.io/posts/2022-10-03-01-algorithm-array-suzuki/
【アルゴリズム 配列編】ざっくりわかるシェルスクリプト6
https://suzukiiichiro.github.io/posts/2022-09-27-01-array-suzuki/
【grep/sed/awkも】ざっくりわかるシェルスクリプト5
https://suzukiiichiro.github.io/posts/2022-02-02-01-suzuki/
【grep特集】ざっくりわかるシェルスクリプト4
https://suzukiiichiro.github.io/posts/2022-01-24-01-suzuki/
【はじめから】ざっくりわかるシェルスクリプト3
https://suzukiiichiro.github.io/posts/2022-01-13-01-suzuki/
【はじめから】ざっくりわかるシェルスクリプト2
https://suzukiiichiro.github.io/posts/2022-01-12-01-suzuki/
【はじめから】ざっくりわかるシェルスクリプト1
https://suzukiiichiro.github.io/posts/2022-01-07-01-suzuki/
【TIPS】ざっくりわかるシェルスクリプト
https://suzukiiichiro.github.io/posts/2022-09-26-01-tips-suzuki/